情愛漂う財閥社長は、一途に不遇女子を寵愛する。
「優菜ちゃん。さっき、桜野から連絡あってね出発したらしいよ」
「そうなんですね、耐えられますかね……あの子」
「どうだろうか、わからないなぁ。でも、まぁ、生きていくには仕方ないよ」
あの子というのは愛湖のことだ。あの日の後に、父は正式な罪状が出たらしいし継母も知った上でお金を使っていたのがわかり罪に問われた。
だが、愛湖は聞いてみると本当に何も知らなかった。幼い頃から砂糖水のように甘々に育ったのもあるし、家のことも知らなかった。
勉強も礼儀作法も嫌いだったし、当然かもしれないが……だからか罪には問われることはなかったのだが、彼女は藤沢グループの旅館に住み込みで働くことになった。女将さんは厳しい人らしく耐えられるか分からないが、ちゃんと頑張れば大丈夫だと八尋さんは言っていた。
まぁ、いろいろ嫌がらせはされたし酷いこと言われてたりしたけど一応は異母姉妹だから、頑張れ……と少しだけエールを送っておこう。
「じゃぁ、優菜ちゃん。今日、夕方迎えにいくからね」
「はい。八尋さん、ありがとうございます」
それからお昼を一緒に食べると、八尋さんは会社の方に帰っていった。