もう、あなたを愛したくありません〜ループを越えた物質主義の令嬢は形のない愛を求める〜

(マルティーナ……)

 愛しい恋人の顔が思い浮かぶ。自分の恋人は婚約者と違って、可愛くて華やかで頭も良くて自分に相応しい令嬢だ。
 キアラを処分する頃に彼女に立派な功績を作ってやって、両親から婚約を認めて貰う計画だった。
 その計画も、キアラ(あの女)のせいで台無しだ。

 あの方の信頼を取り戻し、将来の宰相候補として返り咲くこと。
 愛するマルティーナと結婚をすること。

 ――それが、ダミアーノの最優先すべき課題だった。

 皇后陛下への一番の貢献は、皇太子を廃することだ。それはあの方の悲願だからだ。
 一気に信頼をマイナスからプラスに取り戻して、もう一度チャンスをいただくには、皇太子を陥れるしかない。


 しばらくダミアーノは考え続け、ある結論に辿り着く。

「そうだ……! オレは、被害者だ。不貞の汚らわしい二人に嵌められたのだ……!」 

 この手は使えると直感的に思った。
 皇太子の評判を落とす最良の手――いや、事実だ。

 キアラと皇太子は不貞を働き、皇太子は権力を使って下位身分の公爵令息から婚約者を奪った。これは、皇族としてあるまじき卑劣な行為である!

 同派閥の貴族たちを動員させて噂を流し……議会まで持って行く。そこで自分は真実(・・)を語って皇太子を糾弾。
 そして、最終的には廃太子だ。

「ふっ……ふふふ……」

 素晴らしい計画だと思った。
 いや、これは裁きだ。婚約者がいながら平然と不貞を働くキアラ、そそのかした皇太子。二人に与える天罰なのだ。

 ダミアーノはやっと破壊する手を止めた。
 そしてメラメラと瞳を赤黒く燃やす。

(キアラ……皇太子……絶対に復讐してやる…………!)
< 100 / 117 >

この作品をシェア

pagetop