もう、あなたを愛したくありません〜ループを越えた物質主義の令嬢は形のない愛を求める〜

8 商会の始動

 名誉の凱旋で宮廷に舞い戻って来たレオナルドは、政務に励みながら皇后派閥の撲滅に精を出していた。

 軍事関係は自分の手中に収めた。
 あとは(まつりごと)だ。

 皇后や第二皇子は軍事のことは己に分が悪いと諦めているらしく、もっぱら宮廷内の政治に注力しているようだった。なので宮殿には敵が多く潜伏していて、どこにいても常に気が抜けなかった。
 彼が首都を留守にしているあいだに、あちらは派閥の勢力を拡大していったらしい。

 戻って来てからまだ一ヶ月程度なのに、暗殺未遂はもう3回。最近は敵の攻撃があからさま過ぎて、笑えてくるほどだった。
 皇太子が短期間で北部鎮圧を達成したという輝かしい功績を前にして、敵派閥は焦りが増しているように見えた。

 ちなみに第二皇子は、特に目立った功績を未だに作っていない。
 皇后からは蝶よ花よと育てられ、酷くわがままな暴君に仕上がってしまっていた。おまけに、頭の出来もよろしくない。

 だが容姿だけは良いので、常に令嬢たちに囲まれていた。
 なにもせずとも身分だけで女に好かれる――その事実が、皇子をますます堕落させていくのだった。
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