もう、あなたを愛したくありません〜ループを越えた物質主義の令嬢は形のない愛を求める〜
「魔力ですか?」
キアラはきょとんをした顔――の演技をする。ここは絶対に知らない振りを貫き通さなければならないと思った。
少しも矛盾のないように、皇太子に隙を与えないように慎重に……。
「私は生まれた時より魔力を持っていないので、そもそも魔力がどういうものなのか分からないのです」
本当は今この瞬間も、皇太子の強い魔力の圧を感じているのだけれど。
「そうだな……」
レオナルドは彼女の返答に妙に納得した。
たしかに生まれつき魔力を持たない者にマナという概念を説明しても、頭では理解できても感覚は一生分からないだろう。伯爵令嬢の驚いた表情が、なによりの証拠だ。
(だが……彼女から微量のマナを感じるような……)
それは不安定でいつ途切れてもおかしくない状態だったが、たしかにマナの芽を感じ取ったのだ。
しかし過去に後天的に魔法を使えるようになった者は、帝国の歴史上一人たりとも存在しない。
(あの婚約者がなにか細工をしているのか……?)
リグリーア伯爵令嬢の婚約者――ダミアーノ・ヴィッツィオ公爵令息は、皇后派閥の中でも中心的な人物になっていく男だ。
目的のためなら手段を選ばない皇后の手下だ、違法なことをやっていてもおかしくない。