もう、あなたを愛したくありません〜ループを越えた物質主義の令嬢は形のない愛を求める〜

「キアラ……」

 ダミアーノは甘く囁く。整った美しい顔は不気味な黒い霧に覆われて、それはまるで闇夜を走る獣のように見えた。

 不快な黒いものはどんどん増えて行く。
 それに比例するように血管がうねうねと動く感覚がして、吐き気がして……突如、快感な気分が溢れ出てきた。

(な、なに……これ……?)

 気持ち悪い。
 でも、気持ちいい。

 これは過去にも覚えがある。
 あれは、ダミアーノと初めて夜を迎えた日で――……、

「愛しているよ、キアラ」

 ダミアーノがキアラの頬に手を当てる。泥を塗りたくられたみたいに、ひんやりとした。

 二人の顔が近付く。
 黒い瞳と――赤い瞳が交差した。

 刹那、

(私はこの魔法を知っている!)

 キアラの赤い目がギラリと光って、全身から波濤のようにマナが溢れ出た。

(これは……魔女の、闇魔法!)

 キアラの鮮やかな赤いマナは、ダミアーノの濁った黒をみるみる呑み込んで喰い千切る。
 彼女の体内に、幾つもの魔導式が入り込んでくる。僅かな時間で、複雑な魔法理論が構築されていく。

 魔法も、マナも、全てが彼女の手の内にあった。

 キアラは、カッと目を見開く。

(私は……この魔法を打ち消すことができる……!!)

 次の瞬間、視界が真っ赤に染まった。


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