助けた王子に妃へと望まれた魔女ですけれど、自然が恋しいので森に帰りますね

(おまけ)教えてくれたこと

 ある日の、夕暮れを待とうかという時間帯。

 王都クリフェンに佇む王城にまでラルドリスを送り、しばらく滞在することになったメルは、王城の庭にて日課となった散歩を楽しんでいた。日が落ちたら帰ってくるようチタに言い含め、自然に放ってやるとメルもぼんやりと庭内を見て回る。

 王城の庭は、庭師たちによって丁寧に管理され、あまり森では見ない植物も生育している。薬作りを手掛ける身としてはなかなか興味深いが、まさかこんな客分の身で勝手に庭を弄り回すわけにもいかず、見て回るだけに留める。

 足元に咲く、小さなアザミたちの群れ……種からは良質な油が取れ、煎じれば胃腸薬になる。あちらにあるジギタリスは、心臓の病に有効だ。しかし、多量に服用すれば毒ともなり、扱いが難しい。

(どうしても、お婆ちゃんとのことを思い出しちゃうな)

「待たせたな。ようやく話が終わったよ」
「あ……ラルドリス様」

 ややかがんでぼんやりと考えごとに浸るメルの後ろには、ラルドリスが佇んでいた。
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