助けた王子に妃へと望まれた魔女ですけれど、自然が恋しいので森に帰りますね

フラーゲン公爵②

「――なるほど、ナセラ森の魔女殿ですか……私も噂には聞いたことがある。森深くに棲むその魔女は、迷いし者や悩み苦しむ者を温かく迎え、心を癒し、その場から送り出してくれる啓示者であるのだと……」
「それ、祖母のことです。おばあちゃんはたびたび怪我人や遭難者を助けてしばらく泊めてあげたり、食糧やお金を分け与えてあげていましたから」

 すべての事情をシーベルに話した後。
 シーベルが祖母のことを知っていたのに驚きながら……メルはフラーゲン邸の医務室にある、とても大きなベッドの上を覗いていた。
 今そこでは、ラルドリスが深い眠りについている。

「チュチュ!」
「こ、こら……駄目だってば!」
「おや、ずいぶん可愛らしいお友達だ。殿下の金髪は美味しそうな色をしていますから、気になるのも無理はありません」
「もう……大人しくしといてよ?」
「キュ~……」

 どうやらシーベルという人物は随分心が広いらしく、チタがラルドリスの金髪にいたずらしようとしたのを見ても気にせず笑っただけだ。メルは冷や冷やしながら彼を、ぽいっと黒ローブのフードの中に放り込んだ。
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