復讐は恋を妨げる
第四話 身に覚えのない事実



〇冒頭・前話の続きから・病室
見つめう結奈、岬。
結奈、困惑した表情。

岬「婚約者になってもらうって言っても、兄貴を今の立場から引きずり下ろすことができたら……そのときはすぐに婚約解消する」
結奈(好きでもない人と、復讐のために婚約するなんて。そこまで……)
結奈「ねえ、なんで司のことそこまで毛嫌いするの?」
岬「……」
考え込む岬。険しい表情。
岬「俺のことなんて聞いてた?」
結奈「えっと、遊んでばかりで……」
岬「人としてダメな奴。だろ?」
結奈「う、うん」
岬「あいつは昔からそうだ。あることないこと周りに言いふらして、俺の居場所をなくすんだ」

〇回想シーン・岬と司子供の頃

料理を作る岬。小学生くらい。
岬「いつも料理を作ってくれるお母さんのために、今日は僕が作るんだ」
器用に料理を作る岬。テーブルには岬の作ったオムライスが並べられている。
岬「へへっ、結構上手にできた」
自慢気な幼い岬。

司「ただいまー」
中学生の制服、学ランを着た司、帰宅する。
岬「あ、お兄ちゃん。おかえりなさい」
司「どうしたの?これ」
岬「僕が作ったんだ」
司「へえ、」

時間が過ぎる。
父と母が帰宅する。
父・母「ただいまー」
岬「おかえりなさい。あ、あのね……」
司「どけ!」
出迎えようとする岬を押しのける司。
よろりと倒れこむ岬。

司「お父さん、お母さん、おかえりなさい。今日は僕がご飯を作ってみたんだ」
父「おお。司が作ったのか」
司「うん。いつも、お母さんが作ってくれて、大変だと思って」
岬が作った料理を自分が作ったと言い張る司。

岬「ち、ちがっ!」
真実を述べようとする岬。
そんな岬に冷たい視線を向ける父。
父「岬は、どうせゲームでもしてたんだろ」
岬「違うよ……その料理は」
岬の声は父には届かない。

司「お父さん、仕方がないよ。岬は遊んでばかりだから。その分、僕が頑張るよ」
父「まったくなー。岬は誰に似たんだろうな。司ができる息子で良かった」
父の言葉に傷つき涙目の岬。

(回想シーン終了)

 
〇元の病室

結奈「そんな……」
結奈(司がそんな人だったなんて)

岬の過去を聞いて、驚く結奈。

岬「まっ、そんな環境で育ったおかげで、こんなひねくれものに成長しましたよ」
お茶らけていう岬。
結奈「でも、優しいじゃない……昨日も、マンションにまで来てくれたり、泊めてくれたり」
結奈の言葉に、少し頬を赤らめる岬。

岬「勘違いすんなよ。俺はお前を利用するから優しくしただけだ」
ふいっと顔を背ける岬。
結奈(口は悪いし、酷いこと言ってるけど、本当は優しいんじゃないかな?)
岬の底にある優しさに気づき始める結奈。


岬「とりあえず俺の家に住んで、会社は……どうすんだ?」
結奈「会社……!ずっと休んでるってことだよね?」
岬「そらそうだ。ずっと入院してたんだから」
結奈「会社、行かなきゃ」
岬「いやいや、今日はいいだろ。家に帰って今後の作戦を……」
会社に行こうとする結奈を止める岬。
しかし、聞く耳を持たない結奈。

結奈「始業時間過ぎてるけど、顔出してくる」
岬「は?」
結奈「今日から婚約者なんだよね?入院してた時の着替えとか荷物運んでおいて!課長と話したらすぐ帰るから」
言い残して、小走りで駆けていく結奈。
病室に取り残された岬、ため息をつく。

岬「馬鹿じゃん。数か月休んでて居場所なんてあるわけね―だろ」


〇結奈の働くオフィス(昼)

病院から会社へとたどり着く結奈。
入院していたので、休養休暇とされていた。
久しぶりに出社するが、ねぎらいの言葉もかけられず、よそよそしい同僚たち。
 
結奈(なんだか、他の社員の視線が痛い……)

女子社員「どういう神経で出社したんだろうね?」
女子社員「上条副社長と婚約しながら、他の男と浮気してたんでしょ? その帰りに交通事故ってさ。天罰じゃない?」

女子社員が聞こえるようにわざと話す。
その内容に、身に覚えがなく驚く結奈。
 
結奈(え? なにそれ。そんな事実ないのに)

結奈「あの……その話ですけど!」

身に覚えがない話を否定しいようと、声を掛けようとする。
声を掛けるのを遮るように、美香が現れる。
美香「先輩、少しお時間いいですか?」
にこりと微笑む美香。目が笑っていない。



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