めぐるの耽溺日誌


あの後、ここで話すのもなんだからと言った向坂君に連れられて、向坂君がよく行く喫茶店に案内された。

お洒落だけど、あまり人気の無い……言わば、隠れ家のような所なんだろう。




「さて、雪平さん。俺達、晴れて付き合うことになったわけだけど……そうだな、キスでもしとく?」


「えっ!?!?で、でも……その……!そ、それは、心の準備が……!!」


「そう?じゃあ本題に入ろっか」




ピシャリと笑顔で言い切られた。


元からそんなつもりは全く無かったように話を終わらせた向坂君は、鞄から私のノートを取り出し、それを興味深そうに読み始めた。




「ああっ!それ、私の……!」


「雪平さんはさっき、私がどうやって役に立つの?って言ってたよね」


「え?ま、まぁ……」


「このノートを見て思ったけど、君の観察力は常人離れしてるよ。俺でも気付かなかった事もいっぱいあるしね」




そう言うと、彼はノートのページを開いて私に見せた。



「特に、"佐原陸"に関することとか。俺も佐原には気を配ってたんだけど、ここまでの事は分からなかった」




佐原陸。

茶髪でピアスをしていて、一見チャラチャラしてる印象を受けるけど、実際はかなり人嫌いをする性格の人だと思う。

本当に限られた友達としか話さないし、それ以外の人間に対してはドライな態度を隠しもしないので、私はちょっと苦手としている。


でも、なんで向坂君は佐原君の事を気にしてるんだろう。

私の疑問を感じ取ったのか、チラリとこちらを向き、続きを話し始めた。

< 6 / 10 >

この作品をシェア

pagetop