Ring a bell〜冷然専務の裏の顔は独占欲強めな極甘系〜
高臣は茅島のパソコンに目を移し、スクロールさせながらその資料に目を通していく。
「資料を見る限りはこれといった問題はないです。ただ昨日の話が事実だとするならば--」
茅島が画面を指で突く。その場所へと目を凝らした高臣は、顎に指を添えて考えるような素振りを見せる。
「日付がおかしいな」
「えぇ、その通りです。この土地について打診があった日が、彼女の両親が退去の請求をされた日よりも前なんです」
「その時にはすでに売られることが決まって、それか既に売られた後だったのか……なるほど、確かに裏がありそうだ」
「しかも土地絡みですよ。《《あの男》》が関与している気がして仕方ないのは俺だけですかね」
高臣は思わず顔を歪める。もしこの件にあの男が絡んでいるのなら、許し難い事態だった。
「だけどまだ確証はないだろ? このことは内密に進めてくれ」
「もちろんです。ただまだ社内にあった資料しかありませんので、もう少し深く調査を入れる必要があると思います」
「わかった。そこは茅島に任せる。どんな手を使ってもいいから、真実を見つけ出してくれ」
「御意」
そう言って頷くと、パソコンを持って立ち上がった。
「そういえば次のデートは取り付けたんですか?」
「……今夜食事をすることになっている」
「どこでですか? もう予約しましたか?」
「ベリが丘のオーベルジュをさっき予約した」
杏奈と食事の約束を取り付けたとき、あの店のことがすぐに頭に浮かんだ。二人きりのディナーをゆっくりと楽しんだ後は、彼女を誘う計画を立てなければ--。
茅島は驚いたように目を見開くと、口笛を吹いた。
「……すごい。もう落とす気満々じゃないですか。専務の裏の顔を目撃してしまいましたね。こんな野獣だって知らなかった」
「なんとでも言えばいいさ。俺はもうチャンスを逃すわけにはいかないんだ」
「冷然専務、崖っぷちに立つですね」
「……そうだな。だから茅島には感謝してる。昨日のアドバイスがなければちゃんと気持ちを伝えられたかわからないよ。だから今夜はもう少し深く話しをして、もっと近付ければと思うんだ」
「話すねぇ……でもレストランじゃなくてオーベルジュなんでしょ? もう部屋も予約済みだったりして」
高臣は眉間に皺を寄せて黙り込む。図星だったため何も言い返せなかったのだ。
ベリが丘にあるオーベルジュ--食事がメインだが宿泊も出来る隠れ家のようなレストランで、リゾート感溢れる雰囲気が女性に人気だと噂になっていた。
「素直で正直なのはかまいませんが、あまり突っ走りすぎると逆に嫌われることもありますからね。何事も塩梅が大事ですよ」
「わかっている」
「では健闘を祈っています」
手をひらひらとさせながら茅島が部屋から出て行くのを見送った高臣は、椅子の背もたれに力なく倒れ込んだ。
「資料を見る限りはこれといった問題はないです。ただ昨日の話が事実だとするならば--」
茅島が画面を指で突く。その場所へと目を凝らした高臣は、顎に指を添えて考えるような素振りを見せる。
「日付がおかしいな」
「えぇ、その通りです。この土地について打診があった日が、彼女の両親が退去の請求をされた日よりも前なんです」
「その時にはすでに売られることが決まって、それか既に売られた後だったのか……なるほど、確かに裏がありそうだ」
「しかも土地絡みですよ。《《あの男》》が関与している気がして仕方ないのは俺だけですかね」
高臣は思わず顔を歪める。もしこの件にあの男が絡んでいるのなら、許し難い事態だった。
「だけどまだ確証はないだろ? このことは内密に進めてくれ」
「もちろんです。ただまだ社内にあった資料しかありませんので、もう少し深く調査を入れる必要があると思います」
「わかった。そこは茅島に任せる。どんな手を使ってもいいから、真実を見つけ出してくれ」
「御意」
そう言って頷くと、パソコンを持って立ち上がった。
「そういえば次のデートは取り付けたんですか?」
「……今夜食事をすることになっている」
「どこでですか? もう予約しましたか?」
「ベリが丘のオーベルジュをさっき予約した」
杏奈と食事の約束を取り付けたとき、あの店のことがすぐに頭に浮かんだ。二人きりのディナーをゆっくりと楽しんだ後は、彼女を誘う計画を立てなければ--。
茅島は驚いたように目を見開くと、口笛を吹いた。
「……すごい。もう落とす気満々じゃないですか。専務の裏の顔を目撃してしまいましたね。こんな野獣だって知らなかった」
「なんとでも言えばいいさ。俺はもうチャンスを逃すわけにはいかないんだ」
「冷然専務、崖っぷちに立つですね」
「……そうだな。だから茅島には感謝してる。昨日のアドバイスがなければちゃんと気持ちを伝えられたかわからないよ。だから今夜はもう少し深く話しをして、もっと近付ければと思うんだ」
「話すねぇ……でもレストランじゃなくてオーベルジュなんでしょ? もう部屋も予約済みだったりして」
高臣は眉間に皺を寄せて黙り込む。図星だったため何も言い返せなかったのだ。
ベリが丘にあるオーベルジュ--食事がメインだが宿泊も出来る隠れ家のようなレストランで、リゾート感溢れる雰囲気が女性に人気だと噂になっていた。
「素直で正直なのはかまいませんが、あまり突っ走りすぎると逆に嫌われることもありますからね。何事も塩梅が大事ですよ」
「わかっている」
「では健闘を祈っています」
手をひらひらとさせながら茅島が部屋から出て行くのを見送った高臣は、椅子の背もたれに力なく倒れ込んだ。