Ring a bell〜冷然専務の裏の顔は独占欲強めな極甘系〜
「だ、だから……もう流されないって言ったでしょ?」
「それなら十分だけ俺にくれないか? もし杏奈が流されなければ、今日はこのまま家に送る。だけど杏奈が求めてくれれば……お試し期間を設けても構わないから、付き合ってほしい」

 ダメだと思うのに、体は高臣に触れたくて仕方がなくなる。これでは十分も我慢する自信はなかった。

「これは勝負だよ、杏奈。俺と杏奈の我慢比べ。どっちが勝つと思う? 杏奈の忍耐強さか、それとも俺のテクニックか」

 勝負ですって? 勉強ばかりしてきた杏奈が、順位をかなり気にするタイプだということをわかっていているような発言。杏奈は眉間を皺を寄せ、目を細めながら高臣を見る。

「これも盗み聞きからの情報?」
「さぁ、どうかな」
「……わかった。受けて立つわ。でも服は脱がないし、時間も五分にして」
「それ以上は自信がないのかな?」

 言い返せずに黙り込むと、高臣は笑いを押し殺しながら部屋のドアを開けた。それからスマホを取り出してからタイマー機能を起動し、五分にセットする。

「さぁ、部屋に入って」

 高臣は先に部屋に入り、クローゼットに荷物を置く。しかし杏奈の足はその場から動かない。

 このまま中に入ってしまったら、また朝まで出て来られない気がする。本音を言えば、流されない自信が全くなかった。

 好きかどうかは別にして、杏奈の体は昨日のことを思い出し、奥の方が疼き始めている。

 これじゃあ自分から罠にはまりにいくようなものじゃない--でも、彼からの勝負を受けると決めたのは杏奈自身だ。

「さぁ、ドアが閉まってからスタートだ」

 躊躇い、戸惑い、そして杏奈は意を決して部屋の中へと足を踏み入れる。

 ドアがゆっくりと閉じていき、閉まった瞬間体は壁に押し付けられ、激しく唇を塞がれた。
< 54 / 88 >

この作品をシェア

pagetop