お嬢様は今日も美しい

「申し訳ございませんが、おっしゃっている意味が分かりません。嫌がらせ等やってはおりませんし、嫉妬などという感情も持ち合わせてはおりません」

 きっぱりと告げた言葉にプッと小さく誰かが吹き出す声が聞こえた。それも複数。

 王太子に慕う気持ちはないとバッサリと切って捨てるように言われては、笑いたくもなるというもの。けれど、それもすぐに消えてしまった。ここはシリアスな場面ですからね。話の腰を折ってはいけません。

 ちょっと、面白くなってきました。

「な、なにを……」

 王太子は顔を真っ赤にさせて口をパクパクさせています。二の句を告げない様子。
 思いもかけないことを言われたと思ったのでしょうか? 
 お互い歩み寄る気のない関係なのに、自分は好かれているとでも思っていたのでしょうか? ちゃんちゃらおかしいのですが。 

「そ、そうか、なら。本日をもってフランチェスカ・ローシャス公爵令嬢との婚約破棄をここに宣言する。そして、新しくコレット・ダウザード男爵令嬢と婚約を結ぶこととする。だが、コレットへの数々のいじめの償いはしてもらうぞ。いいな」

得意満面に偉そうに高らかに宣言してしまった王太子ですが、いいのですかね。

お嬢様との婚約は王命ですよ。


< 10 / 36 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop