お嬢様は今日も美しい
男爵令嬢が王太子の袖をキュッと掴んで青ざめている様子が目に入る。当事者ですものね。
こちらに非はないとわかっていますから、堂々としていられますが、男爵令嬢はどうなんでしょう? 心境を聞いてみたい気もします。王太子が味方だから、嘘をついても大丈夫と高を括っているかもしれませんが。
「何をそのような。すでに証拠は挙がっている。今更調査することでもないだろう」
「そうかな? 現にローシャス公爵令嬢は否定をしている。そうだよね?」
同意を促すように目を向ける殿下に
「はい。わたくしは全く身に覚えがありません」
お嬢様は首肯する。
「それで、ダウザード男爵令嬢はどのようないじめを受けたのかな?」
「……ベルさまぁ。怖い」
怯えたように王太子の腕にしがみつく男爵令嬢の肩を抱きしめて、ギッと殿下を睨みつける。
「こんな怖い思いをしているのに、まだ痛めつける気か? いい加減にしろ」
「状況をきちんと把握しなくてはまた同じことが起こるかもしれない。それを防ぐためのものだ。ダウザード男爵令嬢のためにも犯人を明らかにしないと安心して学園生活を送れないだろう?」
至って冷静な殿下の物言いに王太子も黙り込んでしまう。
その通り。
お嬢様ではないとはいえ、いつまでも疑われたままでは気分が悪いですからね。
さっさと白黒をつけてもらいたいものです。