恋愛日和 〜市長と恋するベリが丘〜
「では、取材はこれで終了となります。おかげさまで良い取材ができたと思います。まずは記事の原稿案を高梨さん宛にお送りして、内容をご確認いただいている間に並行してデザインレイアウトの方も進行しますね。」

高梨がメモをとる。

「細かいスケジュールは後ほどメールします。引き続き、どうぞよろしくお願いします」
そう言ってお辞儀をすると、胡桃と橘は市庁室を後にした。


「江田さんと市長って、前から知り合いなんスか?」

編集部への帰り道、歩きながら橘が聞いた。

「先週の打ち合わせで初めて会ったよ」
(ちょっと特殊な状況ではあったけど)
パーティーのことを思い出す。

「どうして?」
「や、なんか、江田さんも市長も二人で話してるときに自然な良い顔するなって思って。ほら」

そう言って橘が見せたのは、カメラの背面にある液晶画面だった。
今日撮影した写真が映し出されている。
画面の中の胡桃と壱世は橘の言う通り、カメラを意識していないような自然な顔で笑い合っていた。

「江田さん、なんか顔赤くないっスか?」
橘がニヤッと笑ってからかう。

「イ、イケメンと子どもはみんなが好きな黄金の組み合わせでしょ!」
「いや、子どもとの組み合わせじゃなくて……」

「市長と子どもの写真、表紙に使わせてもらえるといいね! 私、コンビニに寄ってから戻るから!」

胡桃は小走りでコンビニに駆け込むと、少し熱を帯びた頬を両手で押さえた。

(イケメン市長、おそるべし。あんな笑顔見せられたら普通にファンになるでしょ)

またキスのことも思い出してしまう。

胡桃は胸の高鳴りが落ち着くのを待って、編集部に戻った。
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