恋愛日和 〜市長と恋するベリが丘〜

Spot4 三ツ星レストラン

取材から三週間が過ぎた土曜日。

「本当に申し訳ない」

今、胡桃は上品な雰囲気のベージュのワンピースを着て、壱世が運転する車の助手席乗っている。
そして謝罪の言葉を聞いている。

「いえ。でも状況がよくわかりません……」
「だよな。正直俺にもよくわからない」

***

五日前の月曜日、記事の最終確認に胡桃が一人で市長室を訪れたときだった。

『また婚約者のフリ、ですか?』
『ああ。頼まれてくれないか?』

仕事の打ち合わせを終えると、壱世が切り出した。

『本物の婚約者の方は?』
『あれ以来連絡が取れていないし、君に頼みたい事情がある』

『事情? できないこともないですけど、今度はどこのパーティーですか?』
『今回はパーティーじゃないんだ』

『え? じゃあお高いレストランで食事会とかですか?』
『君は食事が出ればいいのか? そんなところ、疲れるだけだと思うが』
胡桃の声が若干弾むと、壱世は呆れ気味の苦笑いを浮かべる。
隣で高梨も同じ表情をしている。
『冗談です』

『まあでも食事も、場合によっては付き合ってもらうかもしれない』

『場合によっては? なんだかすごく歯切れが悪い気がしますけど、一体どこに付き合えばいいんですか?』

胡桃の質問に、壱世は言いにくそうな顔をする。


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