恋愛日和 〜市長と恋するベリが丘〜
Spot5 栗須邸 1
「ごちそうさまでした。どのお料理もすっごくおいしかったです!」
食事を終えると胡桃は笑顔で礼を言った。
楽しい気持ちのまま、結局デザートまでペロリとたいらげた。
「それは良かったわ。ところで胡桃さん、この後少しお時間いいかしら? もう一度うちに寄っていただける?」
「はい」
十玖子の言葉に胡桃がキョトンとすると、隣に立つ壱世は小さな声で「はじまった」と眉を寄せてつぶやいた。
栗須邸に戻った胡桃たちは、先ほどと同じ応接間に通されると、座卓を挟んで十玖子と向かい合うように正座している。
「胡桃さん、今日はお付き合い頂いてどうもありがとう。とっても楽しかったわ」
「こちらこそ。ごちそうさまでした」
「ところで胡桃さん」
(え……)
胡桃が笑顔で答えたところで、柔和だった十玖子の表情が眼光鋭く一変した。
「壱世と婚約しているということだけれど」
「は、はいっ」
胡桃はピリピリとした空気に気圧されつつ返事をする。
「それはあなたと壱世の間の約束事であって、栗須家としてはまだ認めるわけにはいきません」
「え?」
「今日、この家でお会いしてからのあなたの様子を見せていただいたけど、マナーや振る舞いが全くなっていないわね」
「あの、失礼ですが先ほどはテーブルマナーは気にしなくて良いとおっしゃっていたかと……」
「それは私のお客人へのお礼としての食事でなら、という意味です。栗須家の人間になるのであれば、とくに社交の場でのきちんとした礼儀作法を身につけていただかないと困ります」
ピシャリと言う十玖子に驚きながら、胡桃は隣に座る壱世の方を見る。
壱世も胡桃の方に視線を送る。
その視線から「嫌だと言ってくれて構わない」と読み取れた。
(うーん、断るべきなんだろうけど……)
食事を終えると胡桃は笑顔で礼を言った。
楽しい気持ちのまま、結局デザートまでペロリとたいらげた。
「それは良かったわ。ところで胡桃さん、この後少しお時間いいかしら? もう一度うちに寄っていただける?」
「はい」
十玖子の言葉に胡桃がキョトンとすると、隣に立つ壱世は小さな声で「はじまった」と眉を寄せてつぶやいた。
栗須邸に戻った胡桃たちは、先ほどと同じ応接間に通されると、座卓を挟んで十玖子と向かい合うように正座している。
「胡桃さん、今日はお付き合い頂いてどうもありがとう。とっても楽しかったわ」
「こちらこそ。ごちそうさまでした」
「ところで胡桃さん」
(え……)
胡桃が笑顔で答えたところで、柔和だった十玖子の表情が眼光鋭く一変した。
「壱世と婚約しているということだけれど」
「は、はいっ」
胡桃はピリピリとした空気に気圧されつつ返事をする。
「それはあなたと壱世の間の約束事であって、栗須家としてはまだ認めるわけにはいきません」
「え?」
「今日、この家でお会いしてからのあなたの様子を見せていただいたけど、マナーや振る舞いが全くなっていないわね」
「あの、失礼ですが先ほどはテーブルマナーは気にしなくて良いとおっしゃっていたかと……」
「それは私のお客人へのお礼としての食事でなら、という意味です。栗須家の人間になるのであれば、とくに社交の場でのきちんとした礼儀作法を身につけていただかないと困ります」
ピシャリと言う十玖子に驚きながら、胡桃は隣に座る壱世の方を見る。
壱世も胡桃の方に視線を送る。
その視線から「嫌だと言ってくれて構わない」と読み取れた。
(うーん、断るべきなんだろうけど……)