恋愛日和 〜市長と恋するベリが丘〜
十階でエレベーターを降り、ふかふかの絨毯が敷かれた廊下を通って市長室に向かう。
市長室はフロアのつきあたりだ。
胡桃が「コンコン」と小さくノックして、ドアノブに手を掛けゆっくり開けようとしたときだった。
「——は? 今さら何を言ってるんだ? そういう約束だろ!? 逃げるのか?」
中から男性の焦ったような声が響いた。
(電話してる……?)
「今夜のパーティーはどうするんだよ! 婚約者同伴って伝えてあるんだぞ、おい香——」
(ここが市長室ということは、声の主は栗須市ちょ……)
「盗み聞きとは感心しませんね」
「ヒッ」
突然後ろから声をかけられて、胡桃は思わず喉からおかしな声を出し、肩をビクッと上下させた。
振り向くと三十代前半くらいの、ダークネイビーのスーツに七三分けで銀縁メガネをかけた、いかにも仕事ができそうな見た目の男性が立っていた。
その男性はそのままドアを開けると胡桃を押し込むように部屋に入れた。
部屋の壁一面のガラス窓の側には、通話を終えスマートフォンに向かってため息をつく男性が立っている。
チャコールグレーのスリーピーススーツに赤みのあるダークブラウンのネクタイを締めている長身の男性。
栗須市長だ。
市長室はフロアのつきあたりだ。
胡桃が「コンコン」と小さくノックして、ドアノブに手を掛けゆっくり開けようとしたときだった。
「——は? 今さら何を言ってるんだ? そういう約束だろ!? 逃げるのか?」
中から男性の焦ったような声が響いた。
(電話してる……?)
「今夜のパーティーはどうするんだよ! 婚約者同伴って伝えてあるんだぞ、おい香——」
(ここが市長室ということは、声の主は栗須市ちょ……)
「盗み聞きとは感心しませんね」
「ヒッ」
突然後ろから声をかけられて、胡桃は思わず喉からおかしな声を出し、肩をビクッと上下させた。
振り向くと三十代前半くらいの、ダークネイビーのスーツに七三分けで銀縁メガネをかけた、いかにも仕事ができそうな見た目の男性が立っていた。
その男性はそのままドアを開けると胡桃を押し込むように部屋に入れた。
部屋の壁一面のガラス窓の側には、通話を終えスマートフォンに向かってため息をつく男性が立っている。
チャコールグレーのスリーピーススーツに赤みのあるダークブラウンのネクタイを締めている長身の男性。
栗須市長だ。