恋愛日和 〜市長と恋するベリが丘〜
初日は二時間だった指導も長い日には四、五時間に及び、土日に連続して行われることもある。
ベリが丘市長の土日の公務は減らす方向にはなっているが、それでも土日のどちらかにはイベント出席などの予定が入っていることも多く、胡桃に付き合わせれば壱世の休みが削られていく。
「べつに。前にも言ったけど助かってるのは俺の方だし、俺が好きでやってることだ」
「好きで?」
意外な発言に壱世の方を見た。
「俺は、君と話すのが結構好きなんだ。裏表がなくてポジティブで、話してると元気になるというか……そうだな」
壱世も胡桃を見る。
「君と話していると癒される」
「そんな風に言ってもらったの、初めてです」
胡桃の胸がトクンと優しく脈打つ。
「疲れを癒やせてるなら、ほんの少しでも役に立ててるなら、良かったです」
胡桃は照れくさくなって俯き気味に笑う。
「いっそのこと、本当に婚約でもするか?」
胡桃は、壱世の言葉がうまく認識できずに一瞬黙る。
「は!?」
意味がわかり、また壱世の方を見る。
「ま、またそんな冗談でからかって! いじわるすぎです」
「冗談、か」
壱世は運転席で前を見ながら静かに笑う。
(本物の婚約者がいるのに!)
それに、彼の求める結婚相手のスペックに自分が当てはまらないであろうことは胡桃にもわかっている。
「あ、あの! あれ、良かったです。この前のイベントのスピーチ! 〝ベリが丘を未来ある若者が活躍できる街にしていきたいと思ってる〟って」
壱世の冗談に熱くなってしまった顔をごまかすように、胡桃が言う。
「ああ、あれ。そっか、ありがとう」
いつものような笑顔を想像していた胡桃は、壱世の表情が少し曇った気がして小首を傾げた。
ベリが丘市長の土日の公務は減らす方向にはなっているが、それでも土日のどちらかにはイベント出席などの予定が入っていることも多く、胡桃に付き合わせれば壱世の休みが削られていく。
「べつに。前にも言ったけど助かってるのは俺の方だし、俺が好きでやってることだ」
「好きで?」
意外な発言に壱世の方を見た。
「俺は、君と話すのが結構好きなんだ。裏表がなくてポジティブで、話してると元気になるというか……そうだな」
壱世も胡桃を見る。
「君と話していると癒される」
「そんな風に言ってもらったの、初めてです」
胡桃の胸がトクンと優しく脈打つ。
「疲れを癒やせてるなら、ほんの少しでも役に立ててるなら、良かったです」
胡桃は照れくさくなって俯き気味に笑う。
「いっそのこと、本当に婚約でもするか?」
胡桃は、壱世の言葉がうまく認識できずに一瞬黙る。
「は!?」
意味がわかり、また壱世の方を見る。
「ま、またそんな冗談でからかって! いじわるすぎです」
「冗談、か」
壱世は運転席で前を見ながら静かに笑う。
(本物の婚約者がいるのに!)
それに、彼の求める結婚相手のスペックに自分が当てはまらないであろうことは胡桃にもわかっている。
「あ、あの! あれ、良かったです。この前のイベントのスピーチ! 〝ベリが丘を未来ある若者が活躍できる街にしていきたいと思ってる〟って」
壱世の冗談に熱くなってしまった顔をごまかすように、胡桃が言う。
「ああ、あれ。そっか、ありがとう」
いつものような笑顔を想像していた胡桃は、壱世の表情が少し曇った気がして小首を傾げた。