恋愛日和 〜市長と恋するベリが丘〜

Spot7 栗須邸 2

***

それからも胡桃は週末の度に栗須の家を訪れ、十玖子の指導を受けた。

「背筋が曲がっていますよ!」
「はいっ」
「また顔がニヤけています!」
「えっ」
「『えっ』じゃありません」

(十玖子さん、毎回本当に厳しい……)
「また集中力が切れてますよ」
「は、はいっ」

十玖子の厳しさには毎回驚きつつも、このルーティンにもすっかり慣れてしまった。


「今日は手紙の書き方でした。勉強にはなりましたけど、そもそも字が汚くて。十玖子さんの字がきれいだからちょっと恥ずかしかったです」
「あの人は書道の師範もやってるからな」
行きと帰りの車の中では前回の復習や、その日に習ったことを壱世に見せたり聞かせたりした。

「いつか字も習えたらいいなあ」
「まだ余裕があるのか。元気だな」
「よく筋肉痛になって辛いですけど」
「そういうことじゃなくて」
「毎回怒られてますけど勉強になるので」
胡桃はニコッと笑った。

「毎回おやつも豪華だしな」
壱世が見透かしたように言う。

「まあ正直そこは大事ですね。十玖子さんも柚木さんも、おやつのセンスが良くて……なんていうか、ちょっと悔しいです」
壱世は呆れとおかしさの混ざった顔で笑う。

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