恋愛日和 〜市長と恋するベリが丘〜
「リス君です! 取材の下見なの」
「リス?」
ますます怪訝な顔をされる。

「記事の執筆用のペンネームです。クルミとリスでいいコンビでしょ?」
胡桃は笑って言った。

「おい、変な名前つけるなよ」
壱世が胡桃に不満そうに耳打ちする。

「いいじゃないですか、かわいくて」
胡桃は楽しそうに笑って言った。

「桑さん、十玖子さんのことトッコちゃんて呼んでるんですか? 仲良しですね」
「礼はいらないって言ったのに、うまいどら焼きを持って来てくれてね。しばらく話してたら、栗須市長の奥さんだって言うから話が盛り上がってねー」
この場合の〝栗須市長〟は当然壱世の祖父のことだ。

「桑さん、昔の市長さんのこと知ってるんですか?」
「当たり前だろー? あんなに素晴らしい人はなかなかいないよ。この商店街も市の助成金やら環境整備やらで随分世話になった」
壱世の言っていた通りの評判だ。

「今の市長はどうですか?」

頭上から壱世が尋ねたので、胡桃は驚いた。

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