恋愛日和 〜市長と恋するベリが丘〜
「夏だからまだ少し明るいですね。気温はだいぶ下がりましたけど」
サウスパークの海の見える場所に立って、夕暮れが近づく景色を見ながら胡桃は隣に立つ壱世に言う。
「沈んでいく夕日を見るならツインタワーの展望台ですけど、夕焼けはこの公園もビジネスエリアのビルに反射するのもきれいなんですよね」
「夕日と夕焼けはいつも市長室から見える」
「市長室は市庁舎の上の方ですもんね。さすが市長」
ベリが丘の立地では、海では昇る朝日が見えて、沈む夕日は反対のノースエリア側に見える。
日没を見るなら高い建物に登る必要がある。
(壱世さんて、やっぱり市長さんなんだ。バスで噂されちゃうような人だしね)
こうした、ふとした瞬間に壱世の立場を思い出す。
「どうでした? 今日は丸一日付き合わせちゃいましたけど、ベリが丘のこと少しは〝特別〟になりました?」
胡桃は壱世を見上げて聞いた。
「桑さんもバスの女の子たちも、栗須萬眞市長の孫だからじゃなくて、若くて親近感が湧いて新しいことをしてくれそうな壱世さん自身に、市長として期待してるんですよ」
ニコッと微笑む。
胡桃の言葉に、壱世は少し考えてから口を開く。
「今日一日、いろいろな場所に行って、いろいろな物を食べて、楽しかったし、どれもおいしかった。でも正直、一日では他の街との違いはまだよくわからない」
「まあ、そうですよね。そんな簡単に特別って難しいですよね。よかったら今度はビジネスエリアとか——」
「だけど」
壱世はメガネを外すと胡桃の顔にかけた。
サウスパークの海の見える場所に立って、夕暮れが近づく景色を見ながら胡桃は隣に立つ壱世に言う。
「沈んでいく夕日を見るならツインタワーの展望台ですけど、夕焼けはこの公園もビジネスエリアのビルに反射するのもきれいなんですよね」
「夕日と夕焼けはいつも市長室から見える」
「市長室は市庁舎の上の方ですもんね。さすが市長」
ベリが丘の立地では、海では昇る朝日が見えて、沈む夕日は反対のノースエリア側に見える。
日没を見るなら高い建物に登る必要がある。
(壱世さんて、やっぱり市長さんなんだ。バスで噂されちゃうような人だしね)
こうした、ふとした瞬間に壱世の立場を思い出す。
「どうでした? 今日は丸一日付き合わせちゃいましたけど、ベリが丘のこと少しは〝特別〟になりました?」
胡桃は壱世を見上げて聞いた。
「桑さんもバスの女の子たちも、栗須萬眞市長の孫だからじゃなくて、若くて親近感が湧いて新しいことをしてくれそうな壱世さん自身に、市長として期待してるんですよ」
ニコッと微笑む。
胡桃の言葉に、壱世は少し考えてから口を開く。
「今日一日、いろいろな場所に行って、いろいろな物を食べて、楽しかったし、どれもおいしかった。でも正直、一日では他の街との違いはまだよくわからない」
「まあ、そうですよね。そんな簡単に特別って難しいですよね。よかったら今度はビジネスエリアとか——」
「だけど」
壱世はメガネを外すと胡桃の顔にかけた。