恋愛日和 〜市長と恋するベリが丘〜
「あとで少しだけマスターにお話をうかがってもいいですか? お忙しければ正式にアポを取って出直します」
「いいですよ。私が店長なので、タイミングを見てお声がけください」

それから胡桃も壱世もアイスコーヒーを注文した。

「わ! 本当においしい」

氷が「カラン」と音を立てる。
コーヒーはすっきりとした苦味が特徴で、酸味の無い飲みやすい味だった。
マスターの接客が途切れたところで、胡桃はカウンターに向かい話を聞いた。
店のこと、コーヒーのこと、そしてマスター自身のことなどを聞いて談笑する。

「失礼しました」
接客の邪魔をしない短い時間で席に戻って、壱世に言う。

「マスターもベリが丘育ちなんですって。私が紹介なんかしなくても瓜生さんのお店のファンだそうです。瓜生さんが来たときは緊張しちゃって声がかけられなかったって。カフェの特集でマスター同士対談でもしてもらおうかな」
情報の収穫に、ほくほく顔でまた手帳にメモをする。

「つくづくすごいな、君は」
「え?」
「君の周りは笑い声が絶えない」

「笑われちゃってるってこともありますけどね」
マスターとの会話の様子を見ていた壱世が笑顔で褒めるので、胡桃は照れくささをごまかすように笑う。

ほとんど氷だけのコーヒーのグラスを持ち上げると、ストローに口をつけた。


それから胡桃はまた少しだけ壱世にベリが丘のスポットを紹介すると、バスに乗ってサウスパークに戻ることにした。

時刻は午後五時半を回っていた。

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