両手から溢れる愛を
その日以降、こっそりと鞄に折りたたみ傘を忍び込ませるようになった。
あの時のことを思い出してはドキドキして、そしてまた、と期待して。
雨が降ると心が躍った。……少しだけ。
特に午後から降る日なんて、もう抜群だ。
はたと昇降口で、待ち合わせというほどでもないけれど、なんとなくお互いを待ってみたりして。
「今帰り?」
「うん」
外では雨が降っていて、多くの人が傘をさしていた。
「あのさ、」
キタ。今だ。
「「傘あるんだけど」」
重なった声に、2人してえっと声が漏れた。
「あ、じゃあ帰るか」
「そ、そだね」
どこかぎこちないまま、二つの傘が隣り合って揺れる。
しとしとと静かに傘へと落ちてくる雨は、この前よりも随分と優しい音がした。
そんなこんなで噛み合ったりそうじゃなかったりと色んな日があったけれど、いつの日からか昇降口で会うと決まって三島がこういうようになった。
「傘、忘れちゃった」
そういう時は大体朝は晴れてるのに、午後から雨が降るような天気で。
それにしょうがないなぁと。
あくまでも仕方ないという風に、三島を傘へと招き入れるのだ。
本当はドキドキして嬉しくてたまらないくせに。
それが三島にバレなければいいといつも願っていた。
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