両手から溢れる愛を

***


「喧嘩じゃないよね?」
「えっ?」


放課後。

帰り支度をしていると、みっちゃんから声をかけられた。


多分、今日の朝、三島と変な感じになっちゃったからだろう。


「喧嘩してるようにみえる?」
「んにゃ、見えない」
「だよねー」


三島はいつも通りだった。

まるで昨日のことがなかったかのように。


「でも三島も凪も変は変だよ」
「三島も?」


いつも通りに見えたけど。


「いやぁどう見ても変じゃん。いつもならもっと凪に話しかけてくるじゃん」
「た、たしかに」

言われてみればそうかもしれない。

気まずすぎて顔を見れない話せないの思考一直線だったせいで、向こうからの行動がないことにホッとするので精一杯だった。


「それに極めつけは」


昇降口へとついたところで、ほら、と顎で示された先。


「あ、傘」

三島が傘を持って、クラスの男の子たちと一緒に帰っているところだった。


"今日は曇りのち雨で不安定な天気でしょう"

朝聞いた天気予報士の言葉を思い出す。

それは実際その通りで、朝は曇りで雨は降っていなかった。


そして今、パラパラと降っている雨。


まさに抜群の、絶好の日だった。いつもなら。


「ま、喧嘩じゃないなら大丈夫でしょ」
「……大丈夫だといいけどね」


どこか他人事のように答えた私に、元気出しな!と背中を叩かれる。


「大丈夫だよ!」
「……ありがどうぅ」


どこまでも頼りになる親友に、心の底から感謝した。

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