病んだ心をつまびいて
どうにかもがいて早瀬の腕から逃れようとすると、右頬にふにっとくちびるを押し当てられる。
「えっ、あ……」
「平石のほっぺゲットー!次回はくちびるで!」
「ぎゃはは!俺もしてもらお〜!」
最悪、最悪。
早瀬にキスされた頬をあわてて手で拭うけど、ショックで泣きそうになる。
「じゃ、並んでやるか〜。もーいいよおまえ」
皆本におもいきり背中を突き飛ばされる。
体育館の冷たい床に顔面をぶつけるところまで想像できたけど、私の体は力強い腕に抱きとめられた。
ふわり香る、オレンジの制汗剤。
「っ、新山くん」
見上げれば、新山くんは私を支えながら、真っ黒な目でじっと前方の一点を見つめていた。
さっきまで一番前で男子たちに声かけをしていたはず。
心配して見にきてくれたの?
「新山くん、ありがとう。あの……」
「……」
新山くんはなにも言わず、視線をそのままに私の右頬を撫でた。
まずい
途端にせりあがる焦燥感。
もしかして、早瀬にキスされた瞬間……見られてた?