病んだ心をつまびいて
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「あ」
「あ!」
学校が終わり、マンションへ帰ると玄関ドアの前に見覚えのある人物が立っていた。
その顔を見るのはずいぶん久しぶりにおもえる。
「アズマさん……こんにちは」
ぺこり、とりあえず会釈。
秋風に揺れる黒髪。
どこかの誰かさんとは大違いな澄んだ瞳。
そして、現在失踪中のお父さんの行方を知る人。
「おかえりなさい。会えて嬉しいよ」
爽やかに破顔しながら私のもとへ歩いてくる。
飼い主を見つけたわんこのような。
"嬉しい"というその言葉にみじんも偽りがないことを教えてくれる表情。
なんだかものすごく申し訳なくなるな。
だって学校から出てからずっと、もうじき訪れる解放にルンルンと胸を高鳴らせていたのだ。
こうして私自身を求めてくれている存在を目の前にすれば、イヤでもうしろめたさをおぼえてしまう。
「えと、すみません……いつからいらしたんですか?」
「気にしなくていいよ。たいして待ってないから」
本当だろうか。
失礼します、と。
アズマさんの頬に触れさせてもらう。