病んだ心をつまびいて
キッチンへ向かうため足を踏み出したとき、机の上にひとつの箱が置いてあることに気がつく。
「なんでここに……?」
それは、前住んでいた地域で有名だった、ふるさとのおまんじゅう。
このマンションに引っ越してきたとき、挨拶代わりに秋道さんや近隣の方へ手渡したものだ。
あの日からもう半年以上経ってるのに……なぜまだ残っているのか。
配りきれなかったんだっけ?
いやいやそのまえに、なぜここに置いてある?
寝ぼけて持ち出した?
だとしたらアホすぎるけど……
うーん……まったく記憶にない。
首をかしげたとき、グラリ、視界が歪んだ。
な、なんだこりゃ
「茜ちゃん、大丈夫?」
モコモコとしたアズマさんが駆け寄ってくる。
へんだ、体が熱いのに寒気もする。
彼の人畜無害な雰囲気に気が緩んだのか、学校の中で張り詰めていたものがすべてほどけた感覚。
アズマさんは私の異変をすぐに察すると、おでこに手を当ててきて
「熱があるね……とにかくすぐ横になろう。失礼するよ」
やわらかなお姫様抱っこ。
おぼろな意識で揺られながら、アズマさんの意外にもたくましい腕のぬくもりを感じる。