病んだ心をつまびいて
「失礼しました」
保健室から出て、ゆっくりと廊下を歩く。
通りすがる生徒たちがこっちを見ている気がした。
私のことを気持ち悪い女だと、消えるべき存在だと、全員が言っているように感じてしまった。
「平石……」
早瀬は私の隣にピッタリとくっつき、手をすくい上げてくる。
包まれる右手。
その温度はあたたかく、棘まみれの世界を薄い膜で覆い尽くしてくれる。
「送ってく」
「けっこうです……」
「心配だから送らせてよ。大丈夫だって。キスくらいしかしねぇから」
「なおさらけっこうです」
こうして軽口を叩いていると、ひっきりなしに脳裏に浮かんでくるあのキスシーンがすこしだけ薄れていく。
下駄箱でローファーに履き替えるため、目線を下に落としたときだった。
ゴツゴツと大きな手のひらが、ぬろりと現れた。
滑らかな動きで私の手首をとらえると、五本の指をゆっくり肌に這わせる。
「え……」
持ち上げた視線のすぐ目の前。
新山くんが、立っていた。