病んだ心をつまびいて
「もう終わり」
戻ってきたらしい新山くん。
私から奪ったそれを、ポイッと放り投げた。
「ああっ、神聖な柔道着が!」
「いつまで抱きしめてんだよ。おまえは俺じゃなくて柔道着が好きなわけ?」
「うお!究極の選択……!」
「はぁ?悩むなよアホ。……もう触んの禁止。次柔道着のこと考えたら、すぐに燃やしてやる」
「えええ?!」
新山くんは柔道着をクローゼットの中にしまい込んでしまった。
も、もしや、ヤキモチ?
ヤキモチってやつなのか???
いやいやまさか、柔道着にまでそんな感情抱くはずないよ。
「ほら、こっち座れよ」
どかりとあぐらをかいた新山くん。
その隣にいざなわれ、私は緊張しながら正座。
「足崩せば?」
「む、むりなので、いずれ……」
「んだよそれ。体ガチガチだし」
「そりゃ、新山くんのおうちですから」
「早く慣れろよ。将来はここに住むかもしれないんだぞ?」
いたずらっぽく笑う新山くんがとてもかわいい。
この人の未来にあたりまえのように自分がいることが嬉しくてたまらなかった。
新山家の紅茶を一口。
むふー、しあわせ。
隣から視線を感じて、目を向けると、新山くんがじっと私を見つめていた。
「うん?」
どーしたの?と首をかしげれば、後頭部にふんわり添えられる手。
「キス、してぇ」
「え」
「だめか?」
まっすぐな双眸に貫かれる。
ドキドキ、ドキドキ
破裂しそうな心臓が跳ね回る。
新山くんのくちびるが間近に迫ったとき
──脳裏に、華凛とのキスがよみがえった。