病んだ心をつまびいて



「やだっ、ゆるして、やだぁ……!」




華凛と触れ合ったくちびるが、私に重なっている。


暴れれば前髪を強く掴まれ、ブチブチとちぎれる音がした。




「拒んでんじゃねぇよ……おまえは誰のものだ?!!言ってみろよ!!!」




逃げることも許されず、泣き叫べばそのまま後頭部を床にぶつけられた。

 

「やめて……たすけてっ、いやぁっ、んぅっ」



かまわず貪られた。

息継ぎの間に繰り返される
「愛してる」と「死ね」のことば。
脳内がぐちゃぐちゃに混ぜられる。



圧倒的な力で組み伏せられ、頑丈な檻の中で喘ぐしかできない。




新山くんはこんなことしない。


穏やかで、かっこよくて。

なのに、なのに



私のこの意志も、新山くんへの押しつけになるの……?




「はぁっ、ひゅ、げほっ、んぅ、ぅ゛」




あまりに激しいくちづけに、視界がかすみはじめる。


まるで獣のように無機質な眼球で私だけを映しながら、ひたすらに食い尽くそうと牙を立ててくる。

  

傷だらけのくちびる、舌、粘膜。

 
血まみれのキスはいつまでも止まない。




「ごえ、なさ……も、やめ……んん゛っ」




さらに体重を乗せられ、隙間なく密着したくちづけは容赦なく深くなる。



喉にドロドロと流れ込んでくる血液まみれの唾液。
それを飲み干せといわんばかりに絶え間なく注がれる苦しさは、地獄のようだった。



ごく、ごく
必死に飲めば、あやすように声帯の上を撫でられる。




もはや調教の域を超えていた。



おまえは俺のものだと
骨の髄まで時間をかけて刻み込む儀式。




いつしか抵抗の声も、私を押さえつける音も消え。


ビクつき浮いていた私の腰が床に力なく落ちる。

 

嵐のあとに残ったのは静寂。

 

1ミリも動くことなく。
ただくちびるを重ねるという行為だけで、ふたりは繋がっていた。
何時間も、狂ったように。

 


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