優しい愛で溶かされて
「警察、呼びますよ。」
背後から男の声が聞こえて、私の腕を掴んでいた男たちの力が少しだけ緩んだ。
「はぁ?なんだてめえ」
「その女性、嫌がってますよね」
「あ?」
「今、携帯で動画撮ってます。あんたらがその人になにかしたら警察にこの動画と一緒につき出す。どうしますか」
「んだよ…うぜぇ。いこうぜ」
そんな言葉と同時に強引に掴まれていた私の腕は呆気なく力から解放され、ヤンキー達は逃げるようにこの場からそそくさと走り去っていった。
まだ若干体の震えはおさまっていないが、恐怖から開放されたことに胸を撫で下ろす。そして助けてくれた人へゆっくりと視線を向けると、私を心配そうに見つめる視線とぶつかった。
「怪我はありませんか?」
「…あっ、はい。何ともないです…すみません、ご迷惑をかけてしまって…ほんとすみません…」
「謝らないでください。怪我がなくてよかったです」
諭すような優しい口ぶりに、思わず目の奥が熱くなる。こんな辛い時に優しくされると、ちょっときつい。止んでいた涙の山がまたやってきそうになる。
社会人になってすぐに一人暮らしを始めて上京した事もあって、友達なんか周りにいなかった。思い返すと、私って会社にいるとき以外はずっと独りぼっちだ。
喉の奥がヒュンとなって、息が詰まる。
____あれ…そういえば私、何のためにこんなに頑張ってるんだっけ。