繊細な早坂さんは楽しむことを知らない
「早坂さんもずっときれいだよ。飾らないのに、こんなにきれいな人がいるんだって、初めて見たときに思ったよ。早坂さんの持つ透明感は、何をしても消えないね」

 隙のないメイクをした奈江を見て、それを今日、確信したとばかりに秋也は言う。

 何度もきれいだなんて言ってくれるから返事に困っていると、彼が一歩足を踏み出す。

「そろそろ行こうか、早坂さん。今夜は日曜日でたくさん人が来てるから、迷子にならないように俺の腕、つかんでていいよ」

 迷子にならないように、という言葉に奈江はホッとする。手をつなぎたいと言われたら、妙な勘違いをしてしまって、拒んだだろう。

 歩き出す秋也をつかまえるように袖をつかむ。手をつなぐより平気だろうと思っていたのに恥ずかしくて、つい、腕を伸ばして歩くと、彼がおかしそうに振り返る。

「そんなに離れてたら意味ないよ」

 そう言って、彼は奈江の手首を優しく引く。激しく波打つ心音が聞こえてしまうんじゃないかと心配になるけれど、遠くから聞こえてくる祭りばやしの音がかき消してくれるだろうと信じながら、奈江は秋也の腕にそっと寄り添う。

 肌寒い夜のはずなのに、彼のぬくもりで寒さを忘れる。彼から離れたくない、今夜ぐらいは素直になりたいと思ったのは、すでに宮原の神様がくださる縁に絡めとられていたのかもしれない。
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