繊細な早坂さんは楽しむことを知らない
 遥希とは長い付き合いなのだ。あまり遥希とは共通項のなさそうな風貌の彼だから、意外な気もするけれど、何か馬の合うところがあったのだろう。

「遥希さ、友梨(ゆり)とは別れたんだよ」

 友梨……ああ、そうだ。招待状に書かれた岩倉(いわくら)友梨という名前が鮮明に浮かぶ。間違いない。青年の話はうそでも勘違いでもないだろう。

「招待状出してからの破局だからさ、まあ、いろいろ大変……なんて話、余分だよな。早坂さんは遥希といつからの知り合い?」

 言い過ぎたと思ったのか、彼はそう尋ねてくる。

「私は高校一年の夏休みに初めてお会いしました」
「高校一年って、遥希も?」
「遥希さんは三年生でした。マメ……犬の散歩中に出会って」
「犬の散歩……? ああ、シェードか」

 少し考えるようなしぐさをした彼だが、すぐに思い出したようだ。

「そう。シェードです。シェードは元気ですか?」

 10年前、シェードはまだ子どもだった。元気にしているとうれしい。

「元気だと思うよ。シェードは友梨にもらわれて、どうしてるかは知らないんだ」
「そうなんですか。でも、知らせがないのは元気な証拠ですよね?」
「そうだな。そう思うよ」

 力強くうなずいてくれる彼を見ていると、元気に友梨と暮らしていると信じられる。

「遥希とは、それだけ?」
「そうなんです。一緒に犬の散歩をしたぐらいで、知り合いって言っていいのかどうか……」
「そうなのか」

 そう言ったきり、青年は何か考え込む。そうしてしばらくすると、急に口を開く。

「高三の夏休みって言えばさ、俺はもうここでアルバイトしてたわけなんだけど、ちらっと遥希から変な話聞いたことあるよ」
「変な話って?」
「御守りが見つからないとかなんとか」
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