繊細な早坂さんは楽しむことを知らない
「ジェンデって、どこかで見たような……」

 名刺を裏返すと、株式会社ジェンデのロゴとホームページのアドレスが載っている。そのロゴをどこかで見たことがあるような気がするのだ。

「へえ、知ってるの?」

 秋也は意外そうにつぶやく。

 奈江が知ってるのはおかしいと感じるような企業なのだろうか。もう少しで何か思い出せそうな気がするのに、一向に浮かんでこない。

「何をしてる会社ですか?」

 思い切って、尋ねてみた。

「アプリ開発だよ。俺が起業したんだけどさ、少し前に社長業は譲って、今はフルリモートのエンジニアのかたわら、ここで修理屋やってる」

 それだけを聞くと、20代にして気ままな生活をしているように思えてしまうが、彼の逞しい体格は、二足のわらじでバリバリ働くためのものかとも思えてくる。

「起業って……、すごいですね」
「吉沢さんのおかげかな」
「そうなんですか?」
「すごく面倒見てもらったんだよ。まあ、話せば長くなるから」

 これ以上、詳しく話す気はないのだろう。突き放すように秋也はそう言ったあと、帰るように促すためか、奈江の気に入ったランプを棚に戻しながら言う。

「よかったら、ランプまた見に来てよ。遥希の知り合いには特に安くするからさ」
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