繊細な早坂さんは楽しむことを知らない
 御守りがないとおじさんが気付いたのは、事故の2日後だった。すぐに彼岸橋を訪れたが、見つけられなかった。一旦はあきらめたものの、どうしてもあきらめきれず、お盆休みを利用して探しに来ていたそうだ。

 その日から、奈江は遥希と一緒に事故の起きた周辺を探した。しかし、御守りは見つからなかった。

 おじさんは時折現れて、まだ探してるんだね。申し訳ない、と頭を下げたが、奈江たちの親切に付き合ってくれているのか、探さなくていいとは言わなかった。

 何か使命感のようなものに囚われて御守りを探していた奈江と遥希だったが、夏休みが終わろうとする頃にはあきらめが浮かんでいた。

「今度、おじさんに会ったら、ごめんなさいって言っておく」

 遥希との最後の会話はそれだったような気がする。また来年会おうね、とか、伯母さんとらんぷやに遊びにおいでよ、とか、そういう次につながる何かではなく、へたに首を突っ込んで、おじさんには申し訳ないことしたね、というそんな会話だった。

 御守りは見つからなかったけれど、あの夏の日がなければ、遥希を好きにはならなかっただろうし、彼と過ごした時間は無駄ではなかったと思いたい。

 奈江はふたたび、彼岸橋を西へ向かって歩き出す。

「またランプ、見に来て、か」

 遥希からはなかった、次につながる何か……そんな秋也の言葉が思い出されて、うっすら笑む。

 あれは、店員が客に言うだけのあいさつ程度の会話だ。なのになぜか、奈江はちょっとだけ、また行ってもいいかもしれないと思うのだった。
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