繊細な早坂さんは楽しむことを知らない
***
「奈江ちゃん、いらっしゃい。ここにあるこれ、帰る時に持っていって。煮びたしも作ったから一緒に」
足の具合が良くない伯母を心配して、奈江が大野の家を訪ねると、玄関先に現れた伯母が、顔を合わせるなり、そう言う。
彼女が指をさす足もとには、デパートのロゴが入った紙袋がある。紙袋から顔を出すのは、つやつやのナスだ。小さな畑で家庭菜園を楽しむ康代の手作り野菜だろう。
「立派なナスだね。いいの? こんなにたくさん」
「ししとうも食べる? 朝、採ったのがあるから」
「うん、もらう」
うなずくと、嬉々として康代は台所へ向かう。あいかわらず、足を引きずっている。まだ完治していないようだが、おかまいなしに歩く姿にはあきれてしまう。
「こっちのは?」
ダイニングテーブルの上にある紙袋を、奈江はのぞき込む。こちらも中身はナスのようだ。
「それは、与野さんちの」
すぐに台所から出てきた康代は、ビニール袋に詰めたししとうの一つを紙袋に入れる。
「与野さんって?」
「近所のおばあさん。この間、きゅうりとトマトを持ってきてくれたから、お返し」
「これから持っていくの?」
すぐに玄関へ向かおうとする康代を引き止めるように尋ねる。
「彼岸橋の先だから、すぐに戻るわね。奈江ちゃんはお茶でも飲んで待ってて」
「彼岸橋って、ちょっと距離あるね。私が持っていこうか? 朝からずっと動いてるんでしょ? 無理すると、治るものも治らないよ」
「悪いわよ」
「大丈夫。与野さんちだね」
奈江は早速、紙袋を持ち上げる。
「そう、与野みね子さん。娘の美乃さんとふたりで暮らしてるから、美乃さんが出てこられるかもしれないけど」
「わかった。すぐに行ってくるね」
「奈江ちゃん、いらっしゃい。ここにあるこれ、帰る時に持っていって。煮びたしも作ったから一緒に」
足の具合が良くない伯母を心配して、奈江が大野の家を訪ねると、玄関先に現れた伯母が、顔を合わせるなり、そう言う。
彼女が指をさす足もとには、デパートのロゴが入った紙袋がある。紙袋から顔を出すのは、つやつやのナスだ。小さな畑で家庭菜園を楽しむ康代の手作り野菜だろう。
「立派なナスだね。いいの? こんなにたくさん」
「ししとうも食べる? 朝、採ったのがあるから」
「うん、もらう」
うなずくと、嬉々として康代は台所へ向かう。あいかわらず、足を引きずっている。まだ完治していないようだが、おかまいなしに歩く姿にはあきれてしまう。
「こっちのは?」
ダイニングテーブルの上にある紙袋を、奈江はのぞき込む。こちらも中身はナスのようだ。
「それは、与野さんちの」
すぐに台所から出てきた康代は、ビニール袋に詰めたししとうの一つを紙袋に入れる。
「与野さんって?」
「近所のおばあさん。この間、きゅうりとトマトを持ってきてくれたから、お返し」
「これから持っていくの?」
すぐに玄関へ向かおうとする康代を引き止めるように尋ねる。
「彼岸橋の先だから、すぐに戻るわね。奈江ちゃんはお茶でも飲んで待ってて」
「彼岸橋って、ちょっと距離あるね。私が持っていこうか? 朝からずっと動いてるんでしょ? 無理すると、治るものも治らないよ」
「悪いわよ」
「大丈夫。与野さんちだね」
奈江は早速、紙袋を持ち上げる。
「そう、与野みね子さん。娘の美乃さんとふたりで暮らしてるから、美乃さんが出てこられるかもしれないけど」
「わかった。すぐに行ってくるね」