繊細な早坂さんは楽しむことを知らない
 血相を変える奈江を見て、心配そうに秋也が尋ねる。

 みね子が窓を閉め、カーテンを引くのを見届けた奈江は、門を離れながら、少々興奮気味に話す。

「みね子さんが持ってたんです」
「持ってたって、何を?」
「御守りです。紺色の、宮原神社の御守り」
「御守り……?」

 秋也が眉をひそめる。

「間違いないです。交通安全の刺繍がされてたし、おじさんが探してた御守りとまったく同じものなんです。どうして、みね子さんが……」
「ちょっと待て。宮原神社の御守りだろう? 近くなんだし、まったく同じものを持ってても不思議じゃないけどな」
「そっか……」

 奈江もすぐに、そうかもしれない、と納得する。みね子が経机に御守りを置いたとき、とっさにあれはおじさんのものだと思い込んでしまった。冷静に考えてみたら、彼の言う通りだ。

「ほかに何か見たか?」

 しかし、秋也はそう尋ねる。おじさんの御守りではないと断定するのもまだ早いと思っているようだ。

「見ました。机に、ご主人だと思いますけど、みね子さんと一緒に映った優しそうな男の人の写真と……」
「写真と?」
「赤いランドセルを背負ったおさげ髪の女の子の写真が並んでました」

 奈江は声を落とす。

「女の子?」
「たぶん、小学一年生ぐらいの。可愛らしい女の子でした」
「お孫さんかな?」
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