繊細な早坂さんは楽しむことを知らない
「そうかもしれないです。でも、お孫さんの写真を仏壇の前に置くなんて……」

 あまり考えたくなくて言葉を濁すが、秋也はごまかさない。

「亡くなってるのか?」
「わからないです。そんなこと聞けないし。……みね子さん、御守りを女の子の写真の前に置いてました。きっとさっき、彼岸橋のところで、御守りを握りしめながら祈ってたんだと思います」
「じゃあ、女の子は……」

 さすがに、秋也もそれを言うのははばかられたのか、口をつぐむ。

 お互いに困惑顔をしながら、彼岸橋まで戻ってきたとき、奈江から先に口を開く。

「伯母さんなら、何か知ってるかも」
「気にはなるよな」
「聞いてみます。あの御守りがどうしても気になって」
「俺も行っていいか?」
「猪川さんも?」

 急な話だ。ちょっと戸惑う。

「俺も気になることがあるんだ」
「でも……」
「いきなり、男を連れていったら驚かれる?」

 おどけるように言うから、奈江は途方にくれる。目をそらしたら、彼は苦笑する。

「冗談だよ。早坂さんって、かなり真面目なんだな。気をつけるよ」

 何を気をつけるって言うんだろう。扱いにくい女だと思われたかもしれない。そう思いつつ、案内してくれる? と、人なつこく笑う彼を突き放すこともできず、奈江は彼と一緒に伯母の家へと向かった。
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