繊細な早坂さんは楽しむことを知らない
 ついで、奈江が言うと、康代は困り顔をする。

「子どもたちの悪気ない昔のうわさ。今ではあの道路も見通しよくなったでしょう。変なうわさはもうないのよ。……猪川さん、お茶がないわね。淹れるわ」

 この話はもう終わり。そう言わないばかりに康代が立とうとする。聞くなら今しかない。そう思って、奈江は尋ねる。

「ねぇ、舞花ちゃんはランドセルに御守りつけてた?」
「御守り?」
「宮原神社の御守り。みね子さんね、大事そうに御守り持ってたから」

 もし、舞花ちゃんが御守りを持っていなかったとしたら、みね子の御守りはやはり、おじさんの息子さんがなくしたものかもしれない。

 仮にそうだとして、どんな過程を経て、みね子の手に渡ったかはわからないが、彼岸橋でものがなくなるという子どもたちのうわさを信じるなら、その可能性は否定できない気がした。

「そうなの? それは知らないわね。御守りがどうかしたの?」
「あ、ううん。なんでもない。伯母さん、ありがとう。ごめんね、こんな話」
「いいのよ。私も当時はまだ若くて、近くのアパートに住んでたから、うわさを聞いたことがあるだけで、そんなに詳しくないの。美乃さんならいろいろ知ってるだろうけど、あんまりお話にはならないわよね」
「そうだよね」

 秋也を見ると、これ以上は聞かなくていいんじゃないか? というように目配せするから、奈江も承知するようにうなずいた。
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