望まれない花嫁に愛満ちる初恋婚~財閥御曹司は想い続けた令嬢をもう離さない~
百合華は驚きの声を上げてから、史輝が去って行った廊下の先を睨む。

タイミングの悪さに苛立っているのだろう。

追うのを諦めたのか、百合華は美紅に視線を戻す。

「美紅が本家に入るなんて信じられない。だいたい総帥夫人なんて務まるはずがないじゃない」

百合華が憎々し気に吐き捨てる。

「これからは使用人の真似事しか出来ない美紅に、私が頭を下げなくちゃならないの? あり得ないわ」

「いえ、頭を下げるなんてことは……」

ありませんと言おうとしたのだが、ぎろりと睨まれてしまい美紅は口を噤んだ。

「そうやっていつも言葉尻を濁すけど、聞いていて不快だわ。やたらとどもったり、話しかけても黙ったままだったりで、あんたは会話すらまともにできないの?」

百合華の剣幕に、美紅は何も言い返せずに俯いた。

(百合香さんの言うことも分かるけど……)

彼女が言う通り、美紅はすぐに言葉に詰まるし、言いたいことの一割も相手に伝えられずに終わる方が多い。

伯父の家に引き取られてからは、何を言っても否定されて、頭ごなしに怒られた。繰り返している内に、自分の気持を表現するのが怖くなってしまった。
< 18 / 195 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop