望まれない花嫁に愛満ちる初恋婚~財閥御曹司は想い続けた令嬢をもう離さない~
「ねえ、史輝さんの相手に選ばれたからって調子に乗るんじゃないわよ」
百合華が一歩前に踏み出し、すごんでくる。
「……調子になんてのりません」
恐怖を感じて美紅はよろめいた。
「それなら、こんな所でぼんやりしてないで、自分の仕事をしなさいよ」
「仕事って……」
「倉庫で片付けをしていたんでしょ? 本家に行くのは明日なんから今日はまだうちの使用人よ。早く行きなさい!」
「は、はい!」
美紅は百合華に追い立てられるように、倉庫に向かう。
母屋から出て庭の外れを足早に進む。
邪魔になるので、傘はささない。
倉庫には誰もいなかった。
伯父に呼びだされる前は、もうひとり同じ作業をする使用人がいたが、どこかに行ってしまったようだ。
もしかしたら戻って来ないかもしれない。
まだ雑然とした倉庫を見回してから、作業をはじめる。