望まれない花嫁に愛満ちる初恋婚~財閥御曹司は想い続けた令嬢をもう離さない~
史輝に愛されていないのは分かっている。

それでも美紅は史輝が大切だから、報われなくても彼に尽くしたい。

無気力だった心に、少しだけど力がこみ上げてくるような気がした。


翌朝。美紅は本家からの迎えの車に乗り込んだ。
見送る者は誰もいない寂しい旅立ちだ。

予想していたので落ち込んではいない。むしろ笛吹家から出られててほっとしている。

幼い頃から十年以上暮らした家だけれど、美紅にとって安らげる場所ではなかった。

私物なんてほとんど持っていないし、未練もない。

初めて乗る車の方が安心できるくらいだなんて。つい苦笑いが零れてしまう。

十五分程走ると、車が赴きのある門を通った。

敷地内はまるで林のように、背の高い樹木が並び立っている。

しかし門から繋がる道は綺麗に整備されており、車は揺れずにスムーズに走っていく。

子供の頃に何度も訪れた屋敷だけれど、十年以上前のことなので記憶が断片的だ。

鮮明に覚えてるのは、史輝が見せてくれた青い鳥。

(あの巣はどの辺りにあったのかな)

記憶を探りながら窓の向こうを眺めていると、青みがかかった灰色の屋根が見えてきた。
< 28 / 195 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop