望まれない花嫁に愛満ちる初恋婚~財閥御曹司は想い続けた令嬢をもう離さない~
「ならなぜだ? どんな思惑が……」

再び伯父が悩み始めたとき、書斎の扉が、ばんと大きな音を立てて開いた。

「知らせは聞きました。美紅が史輝の相手に選ばれたんですって?」

そう言いながら部屋を突っ切り伯父の隣に来たのは、笛吹家の当主夫人の令華だった。彼女は美紅にとって、血の繋がらない伯母にあたる。

一目で高級品と分かるシルクのワンピースを優雅に着こなす令華は、伯父に話しかける間も美紅に厳しい視線を向けている。

「ああ、そうなんだ。なぜ美紅なんかが選ばれるのか、まるで分からないが」

「あなたの娘ではないとはいえ、分家で最も力がある笛吹家の娘だからよ。本来なら百合(ゆり)華(か)が相応しいけれど、血が近すぎるから選べなかったのでしょうね」

伯母は右手を頬に添えて、いかにも残念そうに溜息を吐く。

令華は本家の出身で、史輝からみると叔母にあたる人だ。とても気位が高く、夫である伯父すら意のままに操ろうとする。

この家の当主は伯父だが、本当に怖いのは彼女だと、美紅は常々感じている。

そんな令華がうんざりした目を美紅に向けながら口を開いた。
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