望まれない花嫁に愛満ちる初恋婚~財閥御曹司は想い続けた令嬢をもう離さない~
「本当に……なにひとつ百合華に敵うところがないのに、運だけはあるようね」
百合華とは伯父夫婦の実娘で、美紅とは従姉妹同士になる。今年二十五歳になる美しい女性だ。
名門大学を卒業後、伯父が社長を務める京極建設に入社し、役員秘書として働く京極家自慢の娘。
ただ史輝とは従兄妹の関係になるので、今回の結婚相手の候補に入らなかったようだ。
「とにかく、選ばれた以上は無視する訳にはいかないわ。腹立たしいけれど」
令華は頭痛に耐えるように額を手で覆う。それから所在なく立ち尽くす美紅に、まるで虫を追い払うような仕草をした。
「詳細がまだ分からないから、あなたは仕事に戻りなさい」
「は、はい」
もう少し詳しい話が聞きたいが、居座ったら余計な怒りを買うだけだ。
ふたりは気が短いから、こういう場合は早々に引きあげないと、八つ当たりされてしまうと、これまでの経験で分かっている。
ぺこりと頭を下げてから、書斎を出ようとくるりと踵を返す。
しかし同じタイミングで、ノックの音が部屋に響いた。
「旦那様、本家から史輝様がお見えです」
扉を開けて報告したのは、伯父の秘書だった。
「なに! 史輝君が?」
伯父がガタンと椅子を鳴らして立ち上がる。