Runaway Love
アパートの脇の道路に停め、野口くんは、あたしを降ろそうとシートベルトに手をかける。
あたしは、慌ててそれを止めた。
「か、駆くん、大丈夫だから。自分で降りるから」
「あ、ハ、ハイ。……すみません、クセで」
気まずそうに頭を下げる彼を、あたしはのぞき込む。
「――素敵だと思うけど……他の娘にもクセが出たら、それこそ大変な事になるから、ね?」
あたしは、そう言って、バッグを持って降りようとすると、不意に腕を取られる。
「――え」
かすめていくだけの唇の感触に、ようやくキスされたのだと気づいた。
暗がりだったし、通行人もいなかったので、誰かに見られてはいないだろう。
それでも、外でキスされるという事実に、動揺してしまった。
「か、駆くん?」
あたしが戸惑っていると、彼は微笑んであたしを離した。
「――茉奈さんの方が、素敵ですから」
「なっ……何っ……言ってっ……!!」
思わぬ返しに、硬直してしまう。
それを見て、野口くんは困ったように笑った。
「やっぱり、ドア、開けましょうか?」
「いっ……いいからっ!おやすみなさいっ!」
「ハイ、おやすみなさい」
挙動不審になりながらも、車から降りると、あたしはアパートの階段を上る。
そして、部屋のドアの鍵を開けて、下を見やると、野口くんの車が発進するところだった。
あたしは、それを見送ってから中に入る。
――”素敵です”
言われた言葉が頭の中でグルグル回る。
――……けれど。
”つまんねぇ女”
いつまでも刺さっている棘までには、やはり、届きはしないのだ。
あたしは、首を振って頭を切り替えようとするが、今度は別の問題が浮かんできて、その場にしゃがみこんでしまう。
――……どう、しよう。
もしかしたら、次は、本当に――……。
そう思った途端、先程の熱がぶり返してしまって、あたしはヒザを抱えて顔を伏せる。
――たとえ、記憶に無くても、初めてではない。
でも、記憶に無いから――どうしていたのかなんて、わからないのだ。
――まさか、岡くんに、どうだったかなんて、確認する訳にもいかないし。
すると、スマホが振動し、あたしはビクリと跳ね上がった。
バクバクと鳴る心臓を押さえながら、バッグから取り出すと、メッセージが入っていた。
――岡くんから。
あたしは、一瞬、心の中が伝わってしまったのかとあせるが、そんなはずもなく。
――土曜日、よろしくお願いします。
たった、それだけ。
早川からのような――業務連絡のような文。
それを、さみしく感じてしまったのは――……きっと、気のせいだ。
あたしは、慌ててそれを止めた。
「か、駆くん、大丈夫だから。自分で降りるから」
「あ、ハ、ハイ。……すみません、クセで」
気まずそうに頭を下げる彼を、あたしはのぞき込む。
「――素敵だと思うけど……他の娘にもクセが出たら、それこそ大変な事になるから、ね?」
あたしは、そう言って、バッグを持って降りようとすると、不意に腕を取られる。
「――え」
かすめていくだけの唇の感触に、ようやくキスされたのだと気づいた。
暗がりだったし、通行人もいなかったので、誰かに見られてはいないだろう。
それでも、外でキスされるという事実に、動揺してしまった。
「か、駆くん?」
あたしが戸惑っていると、彼は微笑んであたしを離した。
「――茉奈さんの方が、素敵ですから」
「なっ……何っ……言ってっ……!!」
思わぬ返しに、硬直してしまう。
それを見て、野口くんは困ったように笑った。
「やっぱり、ドア、開けましょうか?」
「いっ……いいからっ!おやすみなさいっ!」
「ハイ、おやすみなさい」
挙動不審になりながらも、車から降りると、あたしはアパートの階段を上る。
そして、部屋のドアの鍵を開けて、下を見やると、野口くんの車が発進するところだった。
あたしは、それを見送ってから中に入る。
――”素敵です”
言われた言葉が頭の中でグルグル回る。
――……けれど。
”つまんねぇ女”
いつまでも刺さっている棘までには、やはり、届きはしないのだ。
あたしは、首を振って頭を切り替えようとするが、今度は別の問題が浮かんできて、その場にしゃがみこんでしまう。
――……どう、しよう。
もしかしたら、次は、本当に――……。
そう思った途端、先程の熱がぶり返してしまって、あたしはヒザを抱えて顔を伏せる。
――たとえ、記憶に無くても、初めてではない。
でも、記憶に無いから――どうしていたのかなんて、わからないのだ。
――まさか、岡くんに、どうだったかなんて、確認する訳にもいかないし。
すると、スマホが振動し、あたしはビクリと跳ね上がった。
バクバクと鳴る心臓を押さえながら、バッグから取り出すと、メッセージが入っていた。
――岡くんから。
あたしは、一瞬、心の中が伝わってしまったのかとあせるが、そんなはずもなく。
――土曜日、よろしくお願いします。
たった、それだけ。
早川からのような――業務連絡のような文。
それを、さみしく感じてしまったのは――……きっと、気のせいだ。