Runaway Love
63
それから、総務部に寄り、不本意ながらも浦川主任に工場事務の件を頼もうとすると、意外な言葉で返された。
「――別に、問い合わせられれば答えます」
キツそうな見た目の彼女は、腕を組みながら、そう言ってあたしを見やる。
「――……そう、ですか。……よろしくお願いします」
「言っときますけど、私の方も、教育がてら他の人にさせてますから。いつまでも、すべて、私が請け負う訳にもいかないでしょう」
あたしは、視線をそらしながらも正論を述べる彼女を、まじまじと見る。
――何だ。
――……この前のアレは、そういう事か。
てっきり私情でたらい回しにされてるかと思った。
言ってる事は納得できたので、あたしは、頭を下げて、総務部を後にした。
――……私情が入っていたのは、あたしの方か。
少しだけ反省。
いくら、心当たりがあるとはいえ、感情的になりすぎたようだ。
大阪に向かう前に本当の事がわかって、一安心したあたしは、そのまま会社を後にする。
受付には、既に、篠塚さんの姿は無い。
九月からの契約を切られた、と、野口くんが言っていたけれど、もしかしたら、前倒しされたのかもしれない。
チラチラと受ける視線をそのままに、あたしは、背筋を伸ばして会社を出た。
そのままアパートに帰ると、すぐに荷物を持って、大家さんに鍵を返す。
合鍵は母親に渡して、週一で掃除に来ると伝えてあるので、あっさりと手続きは終わった。
「いってらっしゃい。気をつけてな」
「――……ハイ。ありがとうございます」
ニコニコと手を振る大家さんに頭を下げ、あたしは、バス停に向かい、駅行きのバスを待つ。
日中なので、並んでいる人もいなかった。
定時に着いたバスに、スーツケースを持ち上げて乗り込む。
すぐ目の前の席が空いていたので、あたしは、邪魔にならないように、荷物を二人掛けの窓側に寄せた。
ガラガラのバスだし、この時間だ。そう乗って来る人もいないだろう。
あたしは、窓から見える景色を見やり、少しの間、頭を空っぽにする。
これから、何があるかわからないけれど――やるしかないのだ。
そして、浮かんできたのは、そんな言葉。
――それが、あたしの、今の仕事なのだから。
駅に着き、新幹線乗り場まで向かう。
ありがたいコトに、一番近いこの駅は、新幹線の停車駅でもあるのだ。
一階は駐車場と待合室や広場。そこを通り過ぎ、二階に階段で上がって改札を通り、エスカレーターで三階の新幹線乗り場まで向かう。
――……こんな風に乗る事があるなんて、思ってもみなかった。
これまで遠出など、修学旅行くらいしか無かったのだ。
旅行自体、まず、行こうとも思わなかったし。
チケットを見て、指定席の表示が出ているホームまで向かう。
頭上の電光案内板を見やれば、あと十分程で、到着するらしい。
平日昼間、それほど乗る人間もいないようだ。
急いで並ぶ必要性も感じなかったので、あたしは、後ろにあった自販機でペットボトルのお茶を買うと、ラインに沿って立った。
新幹線は、あっという間に目の前に到着し、思った以上に静かに停止する。
そして、ゆっくりと開くドアから降りる人もいなかったので、あたしはそのまま一人、車両の中へ乗り込んでいった。
「――別に、問い合わせられれば答えます」
キツそうな見た目の彼女は、腕を組みながら、そう言ってあたしを見やる。
「――……そう、ですか。……よろしくお願いします」
「言っときますけど、私の方も、教育がてら他の人にさせてますから。いつまでも、すべて、私が請け負う訳にもいかないでしょう」
あたしは、視線をそらしながらも正論を述べる彼女を、まじまじと見る。
――何だ。
――……この前のアレは、そういう事か。
てっきり私情でたらい回しにされてるかと思った。
言ってる事は納得できたので、あたしは、頭を下げて、総務部を後にした。
――……私情が入っていたのは、あたしの方か。
少しだけ反省。
いくら、心当たりがあるとはいえ、感情的になりすぎたようだ。
大阪に向かう前に本当の事がわかって、一安心したあたしは、そのまま会社を後にする。
受付には、既に、篠塚さんの姿は無い。
九月からの契約を切られた、と、野口くんが言っていたけれど、もしかしたら、前倒しされたのかもしれない。
チラチラと受ける視線をそのままに、あたしは、背筋を伸ばして会社を出た。
そのままアパートに帰ると、すぐに荷物を持って、大家さんに鍵を返す。
合鍵は母親に渡して、週一で掃除に来ると伝えてあるので、あっさりと手続きは終わった。
「いってらっしゃい。気をつけてな」
「――……ハイ。ありがとうございます」
ニコニコと手を振る大家さんに頭を下げ、あたしは、バス停に向かい、駅行きのバスを待つ。
日中なので、並んでいる人もいなかった。
定時に着いたバスに、スーツケースを持ち上げて乗り込む。
すぐ目の前の席が空いていたので、あたしは、邪魔にならないように、荷物を二人掛けの窓側に寄せた。
ガラガラのバスだし、この時間だ。そう乗って来る人もいないだろう。
あたしは、窓から見える景色を見やり、少しの間、頭を空っぽにする。
これから、何があるかわからないけれど――やるしかないのだ。
そして、浮かんできたのは、そんな言葉。
――それが、あたしの、今の仕事なのだから。
駅に着き、新幹線乗り場まで向かう。
ありがたいコトに、一番近いこの駅は、新幹線の停車駅でもあるのだ。
一階は駐車場と待合室や広場。そこを通り過ぎ、二階に階段で上がって改札を通り、エスカレーターで三階の新幹線乗り場まで向かう。
――……こんな風に乗る事があるなんて、思ってもみなかった。
これまで遠出など、修学旅行くらいしか無かったのだ。
旅行自体、まず、行こうとも思わなかったし。
チケットを見て、指定席の表示が出ているホームまで向かう。
頭上の電光案内板を見やれば、あと十分程で、到着するらしい。
平日昼間、それほど乗る人間もいないようだ。
急いで並ぶ必要性も感じなかったので、あたしは、後ろにあった自販機でペットボトルのお茶を買うと、ラインに沿って立った。
新幹線は、あっという間に目の前に到着し、思った以上に静かに停止する。
そして、ゆっくりと開くドアから降りる人もいなかったので、あたしはそのまま一人、車両の中へ乗り込んでいった。