夏に咲く君に、きっと恋する【完】
 「……凶器になってしまう事も含めて、それが言葉というものの醍醐味だと私は思っています。実際、私自身がそれを耳にしたら怒ってしまうと思いますが」

 そうだった。あの時は、耳にした時は、怒りがこみ上げてきていた。

 「でも、考えてみればその人が自由に気持ちを伝えられる手段としては、何も変わりない事です。私は、憎悪とか嫌悪とか、邪悪な感情も含めて、現代文が、言葉が、好きなんです」

 私はゆっくり、ゆっくり、そう伝える。

 「……はは、日和は真っ直ぐだ、校庭に咲いてる向日葵みたいだな、名前も似ているし」

 そう伏し目がちに彼が笑ったからか、思わず私も笑ってしまった。

 「何、急にそれらしいこと言ってるんですか」

 「本当に、日和みたいな、真っ直ぐで好きなものに一直線で、自分の信念を大切にしているような人が、俺は羨ましい。正直、心惹かれてしまう」

 「何ですか、それは」

 「俺が思っていることそのままだ。日和は日和のままで良い。日和の言葉は人を動かす力がある、もっと素直になればいい」

 そう私に伝える彼の瞳が、私には勿体無いくらい真っ直ぐなものであったことは、私の記憶に強く残っている。
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