お願い、成仏してください! ~「死んでも君を愛する」と宣言した御曹司が幽霊になって憑きまとってきます~
「俺、厄じゃないよ!?」
 彼が必死に主張する。

 ……幽霊であっても悪霊じゃないから払われなかった、のかな? 

「ただの厄払いだよね? 俺を払おうとしたわけじゃないよね?」
「そうだよ」
 うるさいから適当に返事をしておいた。

 お寺を出ると、しとしとと雨が降っていて、私はため息をついた。





 うんざりしながら午後に出勤し、憑いて来た彼を極力無視しようとする。
 フロアに入るとき、富樫さんと出くわした。

「おはようございます」
「お、おはよう」
 富樫さんは私を避けるように足早に立ち去った。

 私はとっさにカズを見た。カズはわざとらしく目線を逸らす。その足元がふわふわと浮いて落ち着きがない。

「なにかしたのね」
「なにも?」
 目をそらしたまま、彼は言う。

「絶対にしたよね。ていうか、なにも触れないし私以外には見えないんじゃなかった?」
「それがさ、電気系には干渉できるみたいで、あいつのスマホに紗智に近付くなって送ってやった!」

 得意げなカズをにらむと、カズははっとしたように言う。
「なにもしてないよ」

 私はいらいらとカズをにらんだ。
「浮気して私を振っておいて、私の新しい恋……になるかもしれないことは邪魔するの?」

「ふってない!」
「ふる予定だったんでしょ」

「そんなわけないよ!」
「じゃあ大事な話ってなんだったのよ」

「それは……大事な話だよ」
「嘘つき」

「嘘なんてついてない!」
 カズはそう言うけど、あの女性の様子からして、彼の言葉を鵜呑みにはできない。

 私には優先して考えなくちゃいけないことがあるのに。
 おなかに手を当てる。

 はやく病院に行かないといけないのに。
 ため息をついて、仕事を始めた。
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