お願い、成仏してください! ~「死んでも君を愛する」と宣言した御曹司が幽霊になって憑きまとってきます~





 帰る直前のことだった。
 課長の江上さんに、ちょっといいですか、と呼ばれた。

 小会議室に連れて行かれ、対面で座る。
「昨日から様子がおかしいけど、大丈夫ですか?」
 優しく聞かれて、私は困った。

 本当のことを話せたらどんなに楽だろう。
 相談したい。だけど。

 迷ってから、思い切って言ってみた。
「実は……幻が見えているかもしれなくて」

 江上さんは驚いたように私を見た。
 それはそうだろう。

「大丈夫なの!?」
 カズが心配そうに言う。

「幻聴もあるみたいなんです」
 私はカズを見て言う。

「俺のことなの? 俺はちゃんといるよ!」
 カズがぷんすかと怒っているのが見える。

「じゃあ、今日の半休は病院に?」
 江上さんがたずねる。

「いえ、まだ……」
 行くなら精神科だろうし、ハードルが高い。厄払いで見えなくなればいいと思ったのだけど。
 二つも病院に行かなくてはならないのかと、気持ちが沈んだ。

「しばらくしたら落ち着きますから。ご心配をおかけして申し訳ありません」
「困ったことがあったらいつでも相談して」
 私は泣きそうな気持で江上さんを見た。

 江上さんは、優しく微笑をくれた。
 その後ろで、カズが江上さんを殴ろうとしているのを見て顔をひきつらせた。

「やめなさいよ!」
 急に声をあげる私に、江上さんが驚いた。

「大丈夫じゃなさそうだけど。明日、休みをとれるようにしておくから、病院に行っておいで」
「はい」
 答えて、私は天を仰いだ。
< 16 / 46 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop