お願い、成仏してください! ~「死んでも君を愛する」と宣言した御曹司が幽霊になって憑きまとってきます~





 涙が落ち着いてから、私は彼を見た。
「ごめん。一番つらいのはあなたなのに……」
「いいよ。俺よりきっと、君のほうがつらい」
 優しい声音に、また涙があふれた。

 いつも彼は優しい。
 出会ったときもそうだった。

 悪くないのに謝る店員さんに、困ったように彼も謝っていた。
 悪いのは俺だから。騒がしくしてごめんなさい、と。
 その思いやりに、心惹かれた。

「現実的に、生んでくれるなら認知は必要だよ。死後認知の手続きをとろう」
「死後認知?」

「そうすれば俺の財産を受け取れる。不安が少しは解消できるんじゃないのかな」
 確かに、育てるにあたっての費用は気になる。

「DNA検査も必要だろうけど、俺とつきあってたときのやりとり、スマホに残ってるよね? 写真とかプレゼントとかも持ってるよね?」
「あるけど……」

「あれがあれば一番いいのにな」
「あれってなに?」

「あれはあれだよ」
「わかんないよ」

「とにかく、弁護士に予約入れて。専門家を入れた方が早いから」
 弁護士なんて、その響きだけで抵抗がある。

 そして、はっとした。
 私は慰謝料を請求される立場だったはずだ。

「本命の彼女も妊娠してるのよね?」
「本命は君だから」

「じゃあやっぱり浮気はしてたの?」
「してない! 俺は君だけだから! そっちもどうにかしないといけないのか」
 彼はむむっと表情を険しくした。

「信じていいの?」
「今はこの状態だからどう証明していいかわからない。だけど、本当に、誓って浮気はしてない」

「……そう」
 信じたい。だけど、信じる、とは言い切れなかった。
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